研究概要 |
下垂体摘出ラットに対し、免疫抑制剤であるcyclosporine(C)を使用した同系及び同種の下垂体移植を試み、その効果を形態学的、内分泌学的に検討した。また、同種移植に用いたラット系間における、異系の程度を免疫学的に検索した。下垂体を摘出したWister-Imamichi rat(WIR)に対し、adultの同種Fischer 344rat(FR)または同系(WIR)下垂体をラット定位脳手術装置にて脳内(視床下部、基低核)へ移植した。実験群は、同種移植(1)C使用群(10mg/kg,im2週連日)(2)C非使用群、(3)同系移植群(C非使用)、(4)Shamope群の4つに分けた。移植後1ヶ月及び9ヶ月で各群の血中ACTH濃度を測定、またインスリン負荷を行った。脳組織標本はHE染色の他抗ACTH抗体および抗ラットプロラクチン抗体による酵素抗体染色を行い移植片を観察した。本年は実験に供した全てのラットの組織所見の確認を行った。また異系移植群のWIRをresponderとし,FRをstimulantとするone-way混合リンパ球培養反応を観察しMHC(major histocompatibility complex)の差異について観察した。 〔結果〕1)血中ACTHは、同系皮下移植群、同種C非使用群(2)、及びshanope群では何れの個体でも測定されなかった。一方同種C使用群(1)では、1ヶ月、9ヶ月、また同系群(3)では、1ヶ月、9ヶ月の何れの個体でもACTHが有意に測定された。2)(1)群の移植1ヶ月例においてインスリン負荷を行うと、ACTHの反応が観察された。3)移植片は(1)、(3)において9ヶ月後も組織学的に脳内に生着しており、酵素抗体法によりACTH及びプロラクチン産生細胞ガンの移植片内に多数同定された。4)リンパ球混合培養反応ではresponder,stimulantを共にWIRとした時は498.8±88.6cpm(n=3)。共にFRとした時は496.4±20.5cpm(n=3)であった。一方、responderをWIR,StimulantをFRとした時は1033.1±121.0cpm(n=6)と約2倍の値を示し、WIRとFRは異種であることが確認された。
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