これまで頭皮上からの磁気刺激には直径10cmの円形コイルを用いていたが、さらに直径5cmの小コイル、および小コイルを二つ合わせた8の字コイルを作製し、コイルから発生する磁束密度を測定したうえで実際に頭皮上から刺激を行った。磁束密度はコイルから離れるにしたがって減衰し、減衰率は小さいコイルほど急速であった。このため小さいコイルでは、頭皮上からの刺減では大脳皮質運動領野を刺激することはできなかった。また、強い磁力が発生すると報告されている8の字コイルの中心部でも刺激に十分な磁束の収束及び強度は得られなかった。結局、直径10cmのコイルの辺縁を用いた大脳皮質運動領野の刺激が最も効率が良かった。 また動物実験にてイヌの頭皮上から磁気刺激を行い、脊髄硬膜外電極より伝導速度が50ー80m/sの2蜂性の運動誘発電位が得られることを確認した。臨床例では、上位頸髄腫瘍4例にて術中モニタリングを行った。頭頂部に刺激用コイルを固定し、下位頸髄硬膜外にカテ-テル電極を挿入し記録したところ、3ー4msecにpeakを有する再現性のある波形が得られた。術中のモニタリングのための問題点としては、コイルから発生するartifactの問題、1回の刺激に時間を要するため加算が困難であることなどが挙げられる。臨床例において得られた波形が運動機能を反映しているかどうか、磁気により刺激されているのは大脳皮質運動領野かどうかなどの問題は今後更に検討を要する。
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