研究概要 |
本研究によって腫瘍の増殖は血管新生を伴うこと、その血管は宿主から導入されること、宿主と腫瘍の血管形態の差の有無などが明らかとなるためmKSAマウス脳腫瘍モデルを断頭直前に開胸し左室穿刺を行いマイクロフィル注入、体内を灌流させその後脳をとり出して100〜200μm透徹標本を作成した。マイクロフィル注入により血管は黄色を呈し肉眼的にも容易に観察された。Day4において脳実質内の血管が側枝を出し腫瘍内へ進入し微小血管として認められた。腫瘍新生血管の走行は2種類に大別。(1)宿主側より比較的太い血管が腫瘍中心部に向かい直線状に新生する形態。(2)腫瘍周囲に向かいらせん状に比較的細い血管が新生する形態。その形態に差はなく一層の内皮細胞である。免疫染色ではVimentin,VIII-related antigenは両者とも内皮細胞に陽性である。継時的な透徹標本ではday8〜day10に腫瘍中心部に向かう血管はその程度や数に変化を認めないが、腫瘍周辺部へ向かうらせん状新生血管は数を増やし腫瘍実質内への進入が著明であった。これら腫瘍隣接部脳組織のGFAP染色は腫瘍新生血管の発育が豊富な部分は周辺部gliaのGFAP染色は陰性あるいは弱陽性であり、一方腫瘍新生血管が比較的乏しい部分の隣接部gliaでは陽性で、また形態学的にもgliaの構造を保持していた。また腫瘍間質部脳組織のGFAP陽性・陰性と傾向はない。以上の事実より腫瘍が増殖・発育していくためには血管新生の形態として腫瘍周辺部に生ずるらせん状発育形態が重要であり、この部分では周辺部gliaは正常なタンパン代謝が失われ、gliaに対する影響も強いことが示唆された。
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