既に前年度の研究結果において腎癌由来マウス移植脳腫瘍モデルにおける腫瘍血管新生の形態学的な特徴に関し検討し直線状発育と、らせん状発育の二種類があることがわかっている。そして本年度は、免疫組織学的検討を中心に検討した。その結果第VIII因子関連抗原が周辺部腫瘍組織に強陽性像を呈し、この部はらせん状発育を呈した部分と一致していた。更に中心部腫瘍の新生血管よりも陽性度が強いことより腫瘍血管の新生には形態学的な差異のみならず性質の上でも異なる血管増生の形をとることが推察された。また血管新生の時期を解明するにあたり、移植後3日、5日、10日、15日と経時的変化を追跡すると移植後約3ー5日目に血管新生が始まることがわかった。一方腫瘍血管新生が腫瘍発育に際し必須であることはわかったが、腫瘍が宿主側脳組織に浸潤していく過程において宿主側グリアに対する反応は重要である。本研究では腫瘍組織の境界部ならびに間質部におけるグリア細胞のGFAP染色を行い、宿主側グリアの反応性を検討したが、血管新生の多い腫瘍周辺部、間質部でGFAPの反応は弱く、したがって宿主側グリアのタンパク代謝に変化を生じていることが示唆され血管新生の少ない部分では未だGFAPの反応は保たれており、このことはタンパク代謝が保持されていることを示している。すなわち腫瘍血管新生は脳組織内での腫瘍浸潤能にも強く関連をもつことが示唆された。
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