本研究は骨肉腫の予後予測因子としてTGF活性が有用か否かを知るとともに、骨肉腫粗抽出TGF活性と予後、X線像、血清アルカリフォスファタ-ゼ値、分裂頻度との関係、粗抽出TGF活性物質をTGF-α、TGF-βおよびソマトメジンとどのような関係があるのか検討した。18例のヒト骨肉腫からrobertの方法でTGFを粗抽出し、TGF活性をNRK細胞のコロニイ-形成能を測定した。TGF-αの濃度をEGF膜リセプタ-競合試験、TGF-βの有無を、EGF添加による比活性の増強で、ソマトメジン濃度はIGF-1、2のレデイオイムノアッセイ(RIA)によりそれぞれ測定した。粗抽出TGF液中の成長因子としては2例に微量のEGF膜リセプタ-競合活性があるのみで、TGF-αはないと考えられ、またEGFもなかった。TGF-βはEGF添加によるTGFの活性の増大・およびTGF活性値の高い例には、血管内皮細胞の増殖抑制のあることから存在が分った。TGF活性値と予後との関係はTGF活性値が120単位以上の症例9例は全例が2年未満に死亡したのに対し110単位以下の9例で死亡したのは2例のみであった(P<0.01)。EGFの添加によりTGF活性が50倍以上増強した9例は2年以内に全例が死亡したのに対しこの増強の低い群9例中4例が3年以上生存した(P<0.01)。TGF活性値と組織標本の細胞分裂頻度との間に正相関があった(r=0.77)。TGF活性値によって従来なかった新しい予後予測が可能であった。特にTGF-βが最も重要である。Robertsの方法で抽出した骨肉種のTGF活性を示す物質中にはTGF-βとソマトメジン/IGF-1・2が存在した。
|