研究概要 |
今年度は,(1)廃用によるラットひらめ筋に対する運動負荷の影響について,形態学的に,(2)脱神経筋に対する運動負荷の影響について,形態学的および生化学的に検索した。 (1)廃用によるラットひらめ筋に対する運動負荷の影響について ATPase染色により速筋細胞と遅筋細胞を分別すると,廃用にともない両筋細胞とも同じ程度に萎縮が起き,従来より指摘されているようなタイプによる特異性は認められなかった。20分/日の運動を負荷すると,萎縮の発現は抑止出来た。電顕的には廃用にともない,筋原線維の崩壊,配列異常,Z帯の断裂などの収縮蛋白の変性のみならず,ミトコンドリア,筋小胞体,グリコ-ゲン顆粒などの代謝に関与する小器官にも傷害が見られた。また運動終板には,神経原性を窺わせる各種の形態異常が観察された。しかし,運動を負荷すると,これら所見は見られなかった。 (2)脱神経筋に対する運動負荷の影響について 部分脱神経後の運動負荷にともない,残存神経の変化を形態学的に,そして神経再生に際し,再生部先端から筋から神経を誘導する物質の同定を試みた。残存神経の径と数は,運動負荷を加えても変わりはなかった。誘導物質は,神経細胞体で合成される蛋白とは全く異質なものであった。また効果器で発現する神経接着分子とは,分子量がやや異なる,65kDaの筋で合成された蛋白質が確認された。今後,この誘因物質が神経系の発生,分化そして病的状態により,どのように変動するかを検討したい。
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