末梢神経修復にさいし、筋枝・知覚枝の各神経束を識別することは、それらの神経束間でのmissdirectionを避け、機能的予後を確実なものとするのに根本的に重要である。そこで成猫を用い以下の結果を得た。1.上肢における筋枝・知覚枝の識別 (1)橈骨神経深枝(筋枝)と浅枝(知覚枝)を露出し、それぞれを電気刺激し、C_6_/_7椎間板から針電極により電位を記録すると知覚枝刺激による方がその第2陽性成分が大きかった。(2)C_6_/_7椎間板刺激により筋枝および知覚枝記録を行なうと、弱刺激では前者からは順行生活動電位(10〜400w)を含む電位が得られたが、後者からは電位(2-3w)は導出されなかった。(3)C_7椎弓下刺激の強度を上げると筋枝では活動電位、およびそれに続く2つの反射電位が得られたが、知覚枝では活動電位のみあった。(4)今後の展開:経頭蓋刺激を行なわなくとも上記方法による臨床応用の可能性が示唆された。今後橈骨神経のみならず、正中、尺骨神経についても脊髄と関連させて検討を加え、また今回得られた反射電位の起源も調べる予定である。2.下肢における筋枝・知覚枝の識別 (1)下腿三頭筋々枝および知覚枝(腓腹神経)を脛骨神経から剥離し、馬尾刺激により、それぞれから下行性末梢神経活動電位(CE-CNAP)を導出した。筋枝からはH波に相当する電位、知覚枝においては後根反射と考えられる電位が観察され、この2種類の電位の替時および波形の相違によって識別は可能であった。(2)筋枝、知覚枝をそれぞれ電気刺激し上行性馬尾活動電位(A-CEAP)を導出し、CE-DNAPと比較すると、筋枝のH波は後者において観察されやすく、知覚枝の後根反射は後者でのみ観察された。従って実験上これらの脊髄反射波の観察にはCE-DNAPの方が有用と思われた。(3)今後の展開:経反的針導出によってCE-DNAPの臨床応用を数例に施行したが、これらの脊髄反射波は誘発筋電位に隠されやすかった。筋池緩剤を用いても導出困難例が多く認められ、今後検討の予定である。
|