研究概要 |
末梢神経損傷に対する修復術を確実に成功させるためには運動神経を筋枝神経束へ,知覚神経を皮膚神経束へ再生させるべく神経縫合を行なうことが根本的に重要である。A,上肢における筋枝,知覚枝の識別について1.実験的研究 成猫の前肢における〓骨神経深枝(筋枝)と浅枝(知覚枝)の識別において椎間板導出の第2陽性成分は後者による方が大きかった。タングステン微小電極を用いた脊髄内電位の検討により,この電位起源は脊髄背面近くにあることが判明した。2.臨床的研究 20才女性の左正中神経不全切断(手関節部より22mm中枢レベル)例に対して,全身麻酔下に神経束の機能診断を行なった。従来法の電気診断では意識下に患者の痛みの反応で評価がなされていた。本症例では,6本の切断神経束の中枢断端のうち,経頭蓋的刺激法とC_<5/6>椎間板導出波形との組み合わせにより皮膚枝(知覚枝),ならびに筋枝が優位であった神経束がそれぞれ2,4本と判定された。皮膚枝と判断された2本のうち1本の神経束刺激によれば,C_<5/6>脊髄硬膜外背側から記録された脊髄誘発電位のうち第2陰性成分とC_<5/6>椎間板導出による前述の第2陽性成分は実験結果と同じく互いに鏡面像をなしていた。B,下肢における筋枝,知覚枝の識別について1.実験的研究 下行性脊髄刺激法によるネコ後肢下腿三頭筋々枝および腓腹神経(皮膚神経)の識別を試み以下の結果を得た。上位腰髄刺激により,筋枝ならびに皮膚神経から陰性棘波とそれに続く多相化した電位が観察された。高頻度刺激負荷により,筋枝導出の第1陰性成分のすぐあとには,単シナプス反射電位が明瞭となった。また皮膚神経から導出された後期多相性成分はpicrotoxinの静脈内投与によりほぼ完全におさえられたのでこの電位は後索を逆行したインパルスにより発生した後根反射電位と考えられた。
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