無処置、フェノバルビタール、3-メチルコレントレンの腹腔内投与を行ったラットの肝臓からミクロゾームの調整、8種類のチトクロームP450(P-450、UT-2、UT-5、PB-1、PB-2、PB-4、PB-5、MC-1、MC-5)の精製を行い、これらを用いてリドカインの代謝実験を行い、リドカインのN-脱エチル化、ベンゼン環の3位水酸化、メチル基水酸化の各代謝経路に特異的なP-450が関与していることを示した。また、精製したP-450に対する抗体を作成し、これをミクロゾームとの反応に加えリドカイン代謝が抑制されることにより、上記の代謝経路選択性を確認した。特にP450PB-5はP450PB-4と非常に類似した分子種であるが、今まで薬物代謝活性をもたないとされていたもので、薬物代謝活性に関してはリドカインが最初の報告である。 また、手術により摘出された14例の病理肝組織よりミクロゾームを調整し、P-450、NADPH cytochromeP-450 reductase、cytochrome b_5の量を求めたところ、個体差が大きく、ラットの場合に比べて何れかの酵素も含量が少なかった。さらにこれらミクロゾームに含まれるP-450の種類を推定する目的で、P-450によって代謝を受ける代表的な基質である7-エドキンクマリン、アニリン、アミノピリンの代謝活性を求めたところ、各ミクロゾームによって代謝活性が異なり、ヒト肝組織中にはラットに比べて多くの種類のP-450分子種が含まれることを示唆するデータが得られた。次に同様に代謝経路特異性を有するリドカインを基質にて実験を行ったところMEGXは何れのミクロゾームでも生成が認められたが、3-OHLIDは14例中9例でのみ生成が認められた。
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