1.ビ-グル犬9匹を対象として研究を行った。肝動脈の結紮により、肝臓への動脈性血液供給を遮断した状態で、1.5MACの吸入麻酔薬(ハロセン、セボフルレン、イソフルレン)を順に負荷して、それら麻酔薬の腹腔循環、肝臓の酸素需要供給バランスおよび肝臓機能への影響を比較検討した。肝臓機能は、indocyanine greenの血中よりの消失率により評価した。その結果、1)イソフルレンはハロセン、セボフルレンに比べ肝臓への血流量と酸素供給量を良く維持すること、2)ハロセンとセボフルレンには肝臓への血流量と酸素供給量に関しては差がないこと、3)ハロセンはセボフルレンに比べて肝機能および肝酸素消費量を抑制することを認めた。 2.カルシウム拮抗薬による低酸素性肝細胞障害に対する保護作用と肝臓内循環への影響について摘出潅流ラット肝モデルを用いて検討した。すなわちラットを麻酔後、肝臓を摘出し潅流装置に移した。まず30分間酸素化した潅流により安定させた後、120分間の低酸素負荷とそれに続いて再酸素化を行い、肝臓内循環動態および肝細胞障害への影響を観察した。なお肝細胞障害の程度は潅流液への酵素(LDH)の逸脱により評価した。その結果、120分間の低酸素負荷に続く再酸素化により急激な肝臓内血管の収縮反応ともに肝臓細胞の障害がおこることを認めた。カルシウム拮抗薬(Nicardipine)をあらかじめ潅流液中に投与しておくと、LDHの逸脱を減弱させると共に肝臓内血管の収縮反応を抑制された。肝臓血管収縮とのLDHの潅流液濃度の間に統計上有意な相関が得られたことにより、カルシウム拮抗薬による肝細胞保護効果には、肝細胞へのカルシウムの流入を直接的に阻止すること以外に血管性の因子が作用している可能性が示唆された。
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