63年度の研究によって以下の事項を明らかにした。 1)集束衝撃波の正常組織に及ぼす影響 高出力の24-piece piezo-elementによるgeneratorを使用し、実質臓器に衝撃波をフォーカシングした。実験には犬を使用し、腎に衝撃波を照射して病理組織学的な検討を行った。急性実験では照射部には衝撃波の圧力、照射回数に比例して出血巣が認められた。組織学的な検討ではこの変化を主に血管損傷、特に動脈壁の破綻に起因していた。慢性実験では出血部は癜痕治癒により萎縮し、同部の機能脱落が認められた。急性実験の摘出腎血管造影では出血部に一致して造影剤の漏出が認められ、同時に動静脈シャントが形成されている所見が得られた。この結果から集束衝撃波は脈管系の変化を介して組織損傷を発生するものと思われた。 2)Mouse hind foot-padに移植したmammary carcinoma(MN48 cells)に低エネルギー衝撃波を照射した実験では腫瘍の増大にはほとんど影響が認められなかった。しかし組織学的な検討では小血管の破綻による出血とその周辺部における組織損傷が認められた。 3)高エネルギー衝撃波による同様の実験では移植腫瘍の増大を抑制する効果が認められた。腫瘍部の組織変化は低エネルギー衝撃波と定性的には同様であったがその程度は血管損傷を中心に明らかに著名なものであった。 以上の結果から集束衝撃波は固形腫瘍に対して破壊作用を及ぼすと考えられる。単純な衝撃波照射よりも抗悪性腫瘍剤との併用によって破壊効果が増強する可能性も示唆され、癌治療に応用できる可能性について期待が持てる結果であった。今後も臨床応用を目指して研究を進めたい。
|