研究概要 |
褐色細胞腫における術前、術中、術後の循環系管理に、我々はATPあるいはCa拮抗剤を用いることが有効であることを見出した。しかし、これらの物質のカテコ-ルアミン代謝に対する作用は不明な点が多くそのためには褐色細胞腫動物モデルの確立が必要と思われた。そこで昭和63年度の研究においては、まずWistar,Fisher,Spraque-Dawley,Long-Evansの4系のラットにニコチン4mg/kg/dayを皮下投与し、副腎重量、副腎組織内、尿中カテコ-ルアミン濃度を測定したところ、9週でWistar系ラットに副腎重量、組織内カテコ-ルアミンの増加が認められ、同ラットがモデルとして適している事が分った。平成元年度はこのWistar系ラットに系を限定し、ニコチン4mg/kg/dayを投与し、尿中、副腎組織内カテコ-ルアミン尿中代謝産物の測定、光顕、電顕による解析を行った。さらにニコチンを9週投与した後、投与を2週間中止した場合のカテコ-ルアミンの動態も検討した。尿中カテコ-ルアミン排泄量は、エピネフィリン及びその代謝産物であるメタネフィリンが有意に増加し、副腎組織内濃度はカテコ-ルアミン3分画とも上昇していた。この上昇は投与を中止した2週間後には、カテコ-ルアミンの尿中排泄量、副腎組織内濃度ともコントロ-ルのレベルまで低下していた。光顕では、HE、重クロム酸染色にて検討した。HE染色では、ニコチン投与群とコントロ-ル群で差は認められず、重クロム酸染色でもエピネフィリンとノルエピネフィリンを染色することは可能であったが、ニコチン投与群とコントロ-ル群の組織内の濃度差を定量化して比較することは困難であった。電顕では、エピネフィリン顆粒が認められる細胞と、ノルエピネフィリン顆粒が認められる細胞が確認でき、ニコチン投与群では、コントロ-ル群と比較して、細胞内の顆粒の数が増加していた。特に、ノルエピネフィリン細胞内の顆粒の増加は顕著であった。
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