研究概要 |
副腎褐色細胞腫の動物モデル作成のために、昭和63年度は、Wistar,SpragueーDawley,LongーEvans,Fisherの4系のラットに4mg/kg/dayのニコチンを連続12週間皮下投与し比較したところ、Wistarラットに9週で副腎重量、副腎髄質内のカテコ-ルアミンの増加が顕著に認められた。平成元年度は、再度Wistarラットに4mg/kg/dayのニコチンを9週間皮下投与し、副腎組織内カテコ-ルアミン濃度、尿中カテコ-ルアミン、及び、その代謝産物の排泄量が増加していることを見出だした。平成2年度は、平成元年度モデルの副腎髄質細胞の電顕的形態計測を行い細胞内カテコ-ルアミン代謝を検討した。電顕試料はニコチン9週投与群、コントロ-ル群のラット副腎髄質より組織ブロックを採取した。カルノフスキ-液、オスミウム酸にて固定後、アルコ-ル上昇系列にて脱水し、EPON812にて包埋し、ダイヤモンドナイフにて600A^^゚の超薄切片を作成した。透過型電子顕微鏡(日立Hー700)にて観察しながら、顆粒の性状によりエピネフィリン(E)細胞、ノルエピネフィリン(N)細胞を判別し、各細胞を、ニコチン9週投与群、コントロ-ル群より50個ずつ抽出した。細胞は、画像解析装置(Luzex3,ニコン社)にて、細胞面積、細胞内カテコ-ルアミン顆粒数、カテコ-ルアミン顆粒平均面積、顆粒密度(細胞内顆粒数/細胞質面積)を測定した。E細胞では、細胞面積、顆粒平均面積の変化は認められなかったが、顆粒数、顆粒密度の増加が認められた。N細胞は、ニコチン投与群で細胞面積の増大、細胞内顆粒数、顆粒平均面積、顆粒密度の増加が認められた。N細胞は、E細胞と比較してニコチン投与による影響が大きかった。以上より、ニコチンの投与によりカテコ-ルアミンの合成、代謝、排泄は促進することが、ホルモン測定値、細胞の形態計測の両面より明らかになった。N細胞は、E細胞と比較して腫大が著しく副腎重量の増加の一因と考えられた。
|