研究概要 |
従来の研究から絨毛癌化に関与する癌抑制遺伝子の存在が明らかとなったため、本年度は1.同遺伝子群の局在する染色体の同定、2.mRNAサブトラクション法等による同遺伝子クロ-ニングを目的とした。1.のためにマウスA9細胞ライブラリ-から正常1,2,6,7,9,11番染色体を含むクロ-ンを選択し、CC1絨毛癌細胞と微小核融合を行い、それぞれの融合クロ-ンについて1)ヌ-ドマウス皮下移植後の腫瘍形成率、2)腫瘍増殖速度、3)足場非依存性増殖、4)細胞培加時間、5)血清要球性、6)細胞飽和密度、を比較検討した。その結果、ヌ-ドマウスでの腫瘍形成率は親細胞、1,2,6,9,11番単一移入クロ-ンで有意差を認めず、足場非依存性増殖・細胞培加速度においても有意差はなかった。しかし7番染色体単一移入6クロ-ンで腫瘍形成率の低下を認め、足場非依存性増殖・細胞培加速度も有意に低下した。一方血清要求性、細胞飽和密度は、親細胞と各種微小核融合クロ-ンとの間で有意差を認めなかった。以上の結果から7番染色体上には絨毛癌の抑制に関与する優性な遺伝子が存在することが推測される。しかし絨毛癌化はこの遺伝子のみにより抑制されているのではなく、おそらく血清要求性等を含むその他の表現形質に関連する複雑な遺伝子群の一連の変異、不活化の集績により生ずることも同時に推測された。 2.の目的のために正常7番染色体の単一移入されたマウスA9細胞及びA9細胞それぞれからmーRNAを抽出し、サブトラクション法によりヒト7番染色体に特異的なcDNAライブラリ-を作製した。さらに同ライブラリ-をpKCRベクタ-にとりこむことを完了した。以後CC1絨毛癌細胞株へトランスフェクションし、シュイサイド・セレクションによるリバ-タントの単離及び癌抑制遺伝子クロ-ニングを行う予定である。
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