研究課題/領域番号 |
63480369
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中野 仁雄 九州大学, 医学部, 教授 (40038766)
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研究分担者 |
堀本 直幹 九州大学, 医学部, 医員
佐藤 昌司 九州大学, 医学部, 助手 (00225947)
井上 充 社会保険佐賀病院, 医長
小柳 孝司 九州大学, 医学部, 助教授 (30136452)
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キーワード | ヒト胎児(Human fetus) / 行動異常(abnormal behavioral pattern) / 脳機能障害(brain impairment) / 超音波電子スキャン(Realーtime ultrasound) / 中枢神経系(central nervous system) |
研究概要 |
ヒト胎児では、中枢神経系の機能が如何なる形で動作に表現されてくるのか、いまだ明らかにされていない。そこで、今年度は、過去二年間の成果を基礎に、2症例をモデルとして子宮内の動作の異常と制御中枢の病変部位との対応について解析した。症例1:妊娠36週0日に、超音波電子スキャンによって胎児の諸種の動作の観察を行った。四肢の運動には特記すべきことはなかったが、眼球運動は60分間の観察期間を通じて、一様に頻度が少なく散発的であったため、REM期とNREM期とを区分することができなかった。また、呼吸様運動も認められなかった。以上の成績から、本症例では呼吸様運動およびREM期/NREM期のUltradian rhythmを刻む制御中枢を包含する部位に病変部が存在すること、そして、それは橋から延髄に至る領域内であると推定された。新生児期の頭部CT検査で橋から延髄に亙る領域の第4脳室底部に相当する部位に、左右対称性の棒状石灰化が検出された。この所見は出生前に診断した解剖学的な病変部位とよく符合した。本症例は2歳になった現在においても自発呼吸はなく、重篤な精神発達遅延が認められている。症例2:妊娠38週3日の超音波検査によって、REM期とNREM期との交代性の出現は認められた。呼吸様運動も四肢の動きもみられた。しかし、口唇運動はREM期、NREM期を通じて不規則であった。以上の所見から、本症例はNREM睡眠に関連する橋から上位の、視床皮質投射を含む範囲内の中枢神経系に病変部が存在すると推測された。頭部CT検査によって、大脳白質に瀰慢性に広がる低吸収域、Verga腔ならびに脳梁の低形成の所見が得られた。本症例では生後3年を経た現在、精神発達遅延および脳性麻痺が認められている。ここに示したように、ヒト胎児においても、少なくとも妊娠末期に至ると成人で明らかにされている個々の動作と制御中枢の解剖学的に区分される機能単位との対応関系が成立することが確認された。
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