研究概要 |
目的:2年間の検討で,卵巣摘出婦人の骨量の減少は20歳代から30歳代までは認められず,40歳代では明らかに認められたことから,加令が影響していることが考えられる。そこで今年度は(1)去勢ラットによる加令の骨量・骨代謝への影響を観察した。さらに(2)若年婦人でカルシュウム(Ca)喪失が甚だしい妊産褥婦における骨量・骨代謝について検討した。また,(3)骨量測定装置の進歩により,精確な骨量が測定できるようになったが,スクリ-ニングにはどの測定方法がよいかを検討した。 成績:(1)去勢ラット8週令では骨量は4.4%増え,16週令では去勢前と同じ,24週令で7.9%,32週令で11.8%減少した。非去勢ラットではそれぞれ18.4%増,12.4%増,0.6%減,7.7%減であった。すなわち,若年婦人では骨形成が盛んであり,見掛け上骨量の減少が見られないだけであり,最大骨量を増やすためには両側卵巣摘出した時点から,エストロゲン補充療法をする必要があるといえる。また40歳代では骨形成能が低下し骨吸収が優位であり,骨量減少への対策がさらに必要である。(2)妊娠中の骨量は対照と比較して妊娠初期,中期,末期とも差は見られなかった。産褥期には,授乳婦の骨量は1ヵ月から有意に減少し,6ヵ月が6.5%と最も減少した。1年後も出産前の値には回復していなかった。(3)DEXA法による橈骨骨量測定法はDHA法による第3腰椎骨量とよく相関し,簡単で短時間で測定できることから,骨量のスクリ-ニングには有用である。 結論:女性の最大骨量を出来るだけ増やすように,生活環境を整備することが重要である。もし両側卵巣摘出した場合には,出来るだけ早期よりホルモン補充療法を開始する。
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