先に提出した昭和64年度計画調書(継続)に記したように、当初の計画を変更して、下記の実験を昭和63年度に行なった。 (A)ラット坐骨神経を用い、フィブリン糊とナイロン糸による神経修復法を比較した。神経の生着率は、神経移植フィブリン糊群80%、移植10-0ナイロン群100%、神経切断再接着フィブリン糊使用群100%、神経切断端再接着10-0ナイロン使用群100%であり、移植群のフィブリン糊使用群以外では、すべて100%と生着率で差がなかった。神経生理学的検索では、神経線維の再生内容でナイロン糸使用群の方が明らかに良好な値を示したが、神経直接刺激による支配筋群の張力は、フィブリン糊群ナイロン糸群間に差を認めず、恐らく臨床レベルでの差は生じないのではないかと予想された。 (B)36匹の白色ラットで持続的な鼻生髄液漏モデルを作製し、髄液漏治療に果すフィブリン糊の役割を検討した。フィブリン糊単独使用群で58%の治療失敗例が認められたのに対し、側頭筋単独治療群では33%、さらにフィブリン糊と側頭筋の併用群で22%であった。非治療群の髄液漏持続率は89%であった。以上より、実験モデルが鼻生髄液漏モデルとしてほぼ適当であり、かつ治療に用いたフィブリン糊は筋肉片と併用する事でその治療効果を増強するが、単独使用の効果は期待できない事が分った。 (C)平成元年度の血流実験の準備段階として、これまでおこなってきた電磁血流を用いた前腕遊離皮弁の血流量に関し格付し、第15回頭頸部腫瘍学会において報告した。
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