(A)36匹の白色ラットで持続的な鼻性髄液漏モデルを作製し、髄液漏治療に果すフィブリン糊の役割を検討した。フィブリン糊単独使用群で58%の治療失敗例が認められたのに対し、側頭筋単独治療群では33%、フィブリン糊と側頭筋の併用群で22%であった。非治療群の髄液漏持続出現率は89%であった。以上より実験モデルが鼻性髄液漏モデルとしてほぼ適当であり、かつ治療に用いたフィブリン糊は筋肉片と併用する事でその治療効果を増強するが、単独使用の効果は期待できない事を報告した。(日耳鼻会報) (B)臨床使用例として現在までに15症例に使用した。 a)観血術鼻骨骨折整復術(1例)b)肥厚性瘢痕修復(1例)c)涙嚢鼻腔吻合術(1例)d)甲状腺術後創閉鎖(トレ-ン使用せず)(2例)e)耳下腺腫摘出術時の神経修復(2例)f)エナメル上皮腫摘出後セラミックスによる再建術症例の5年目における再再建術(1例)g)頸部fistelの修復(1例)h)鼻中隔粘膜の修復(2例)i)鼓膜穿孔閉鎖(1例)j)喉頭部分切除後頸部皮弁の接着固定(2例)k)顎動脈結紮術時上顎後壁の修復(1例) 以上の症例の経過は良好であり、フィブリン糊によると思われる副作用は認められていない。 (C)モルモット顔面神経眼瞼枝を選択的に切断し、ナイロン糸とフィブリン糊による修復を比較する実験を開始した。パラメ-タとして、ENoG、筋電図、筋張力とまばたき反射を応用した神経伝導速度を観察している。徐々にではあるが、実験は順調に進行している。
|