研究課題/領域番号 |
63480378
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
耳鼻咽喉科学
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大久保 仁 東京医科歯科大学, 医学部, 講師 (30014111)
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研究分担者 |
石川 紀彦 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (60184488)
奥野 秀次 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (10134694)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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キーワード | 空洞換気(中耳腔) / ガス代謝 / 耳管機能 / 乳突蜂巣 / 粘膜呼吸 / membrane |
研究概要 |
耳鼻咽喉科領域の臓器は空洞臓器である。そして、臓器の内面は、一層の粘膜で内張りがなされて上気道に夫々開口部を持っている。また、これらの空洞内は、特異な気体成分を有したガスで満たされている。そこで、この様な構造は、異常な気圧環境に暴露すると、洞内気体も環境気圧の影響を受けて変化する。しかし、この調圧には、洞自体にポンプ作用が無いので、気道と交通する自然孔や耳管にボイルの法則が適応されて環境気圧と平衡する。また、副鼻腔等は、呼吸に一致して洞の内圧が変化する。この事は、呼吸運動で常に大気が洞内に出入りする事を意味している。しかし、空洞内には、空洞独自の粘膜呼吸があり、それぞれの洞に特異なガス成分が存在する事が証明された。そして、中耳腔粘膜の呼吸作用は特に重要である。この呼吸作用は、常に洞内に気体を産生しいる。そして、この代謝されたガス分圧が大気圧より高い圧になると耳管から体外に放出する生理機能である。この機能の作用は、鼓膜の裏側に常に一気圧の気体の層を形成して、鼓膜が音振動に効率良く振動する効果に役立っている。即ち、この生理的機能は、従来、教科書に記載されている耳管から中耳腔に気体の補充を行なわれるとする説明を否定するものである。この説明には、中耳腔の酸素分圧が大気の1/3(約 50mmHg )であること。乳突蜂巣が鼓室の20倍も大きな体積を有し、粘膜開面積は、約40cm^2を有している。そしてこれらの粘膜構造をみると、粘膜下毛細血管が細胞膜一枚を隔てて気体と接触する等の事実である。この事実は、肺の様に気体を完全交換する呼吸作用ではないにしても、中耳腔にガス代謝の存在を示唆している。また、人が側臥位になると、上側の耳管開閉と下側の耳管開閉の開閉率に差が認められる。この時に下側の中耳腔の内圧は、上側より有意差をもって高い圧を示す。この事実は、下側の耳管開閉機能が毎回の嚥下運動で開閉しなくなる現象である。この現象は、中耳腔の生理的環境変化に対して耳管が有機的に開閉機能を調節する事を物語るものである。この上下差が出現する現象は、従来、中耳腔の換気は、耳管機能に左右されると考えられて来た説を否定している。何故ならば、生理的中耳腔の内部環境や解剖学的位置関係等の変化が耳管機能に影響する事実である。即ち、耳管機能と中耳腔換気は、全く相互依存の有機的関係で成り立っている事である。以上、大気圧環境の中耳腔の換気の生理学に中耳腔粘膜呼吸作用が重要な役割を果している事を立証した。
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