反復性中耳炎の成因とその対策

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63480382
• 研究機関: 大分医科大学
• 研究代表者: 茂木 五郎 大分医科大学, 医学部, 教授 (20035190)
• 研究分担者: 友永 和宏 大分医学大学, 医学部, 助手 (90188805) ; 黒野 祐一 大分医科大学, 医学部, 助手 (80153427) ; 河内 秀之 大分医科大学, 医学部, 講師 (50161279)
• キーワード: 反復性中耳炎 / 細菌の定着性

研究概要

1.チンチラを用いて、一次免疫反応および免疫複合体による実験的中耳炎モデルを確立しその病態の解析から滲出性中耳炎発症や遷延化に免疫反応が関わっていることが証明された。中耳は、可溶性抗原に対しては免疫的に全身感作の求心路になりがたいことを確認した。滲出性中耳炎にみられる組織学的変化は中耳腔での炎症細胞や種々のchemical mediatorから成る悪循環によって引き起こされるが、炎症性の刺激が消失すれば元にもどる可逆的な変化であった。さらに、抗原による全身感作と中耳局所への抗原注入を繰り返すことで3週間中耳貯留液が持続する長期モデルを確立し、ヒト滲出性中耳炎に見られるような中耳の新生粘液腺や分泌細胞の活発化さらにはリンパ濾胞の形成がみられた。
2.中耳炎起炎菌であるインフルエンザ菌および肺炎球菌の鼻咽腔粘膜上皮細胞への定着性を検討した結果、両菌とも成人より小児で、さらに健常者より滲出性中耳炎患者で高く、細菌定着性の亢進が滲出性中耳炎の発症あるいは遷延化の重要な要因の一つと考えられた。また、鼻咽腔粘液中にはインフルエンザ菌や肺炎球菌に対する特異抗体活性をもつ分泌型IgAが存在し、抗体活性が高い分泌型IgAを有する症例ではこれらの細菌の鼻咽腔上皮への定着性が低かった。この結果は、分泌型IgAが鼻咽腔において細菌の浸入に対する防御機構の一端を担っていることを示唆した。
3.マウスを用いて中耳粘膜の免疫組織学的検討を行なった結果、抗原刺激をうけていない正常中耳粘膜には免疫担当細胞は少なく抗原刺激に対して細胞の動員が起こることがしめされた。即ち、中耳は免疫的にpotential organであって、異物侵襲があって初めて免疫的にactive siteに成り得ることがわかった。

研究成果

• [文献書誌] Masashi Suzuki;Hideyuki Kawauchi;Goro Mogi: American Journal of Otolaryngology. 9. 199-209 (1988)
• [文献書誌] Shigehiro Ueyama;Hideyuki Kawauchi;Goro Mogi: Archives of Otolaryngology. 114. 878-882 (1988)
• [文献書誌] Yuichi Kurono;Tatsuya Fujiyoshi;Goro Mogi: Annals of Otology,Rhinology,and Laryngology.
• [文献書誌] Yuichi Kurono;Goro Mogi: Acta Otolaryngol(Stockn). Suppl454. 214-217 (1988)
• [文献書誌] Noritake Watanabe;Hiroyuki Yoshimura;Goro Mogi: Archives of Otolaryngology. 114. 758-762 (1988)
• [文献書誌] Issei Ichimiya;Shigehiro Ueyama;Goro Mogi: Acta Otolaryngol.
• [文献書誌] Goro Mogi: "EXPERIMENTAL OTITIS MEDIA WITH EFFUSION WithEmphasis on Mucosal Immunity(In:Immunobiology,Histophysiology,Tumor Immunology in Otorhinolaryngology)" Kugler publications, 253-263 (1987)
• [文献書誌] Goro Mogi;Joel M.Bernstein: "Immune Mechanisms in Otitis Media with Effusion(In:Immunology of the Ear)" Raven Press, 279-299 (1987)