研究概要 |
眼のビタミンA代謝において、網膜視細胞外節のレチノ-ル脱水素酵素は、光退色したロドプシンに由来する全トランスレチナ-ルを全トランスレチノ-ルに変換している。外節から遊離した全トランスレチノ-ルおよび血中からの全トランスレチノ-ルは色素上皮細胞に運ばれ、11シスレチナ-ルになって外節に運ばれロドプシン形成に使われると考えられている。外節のレチノ-ル脱水素酵素は不安定なために分離されていなかったが、我々は、この酵素を精製し、一部の性質を調べることを目的としてきた。 我々は、まずレチノ-ル脱水素酵素の可溶化の条件を検討し、ポリエチレングリコ-ル沈澱、ハイドロキシルアパタイト、コンカナバリンAセファロ-ス、セファロ-ス6Bを組み合わせてレチノ-ル脱水素酵素を精製した。精製されたレチノ-ル脱水素酵素の比活性は61.8nmol/min/mgで、回収率は、3.8%であった。レチノ-ル脱水素酵素は、SDS電気泳動法で分子量37,000であった。精製されたレチノ-ル脱水素酵素は酸化還元酵素の活性を持っていた。レチノ-ル脱水素酵素の基質立体特異性は、全トランスレチナ-ルに対して親和性を持っていることが分かった。 精製された分子量37,000のタンパク質がレチノ-ル脱水素酵素であることが、このタンパク質に対する抗体によってレチノ-ル脱水素酵素活性が沈澱することによって確かめられた。抗レチノ-ル脱水素酵素抗体は、外節タンパク質のうち37,000タンパク質のみと反応することもウエスタンブロッティング法により示された。 抗レチノ-ル脱水素酵素抗体を用いてレチノ-ル脱水素酵素の網膜内局在を調べたところ、抗体は視細胞外節とのみ反応することが分かった。視細胞外節におけるレチノ-ル脱水素酵素対オプシンの比は、固相酵素免疫測定法により測定し、1:140であった。
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