眼血管関門の一つとして網膜色素上皮細胞間のtight junctionがあげられる。このtight junctionを含めたjunctional complexの荷電状態を検索するために急速凍結したラット網膜を用いて凍結超薄切片を作成しカチオン化フェリチンを切片上で反応させ電子顕微鏡で観察した。カチオン化フェリチンの粒子は色素上皮細胞の形質膜表面に認められた。またjunctional complexではgap junctionを除くjunctionに反応が認められた。さらに色素上皮細胞の基底膜側のBruch膜に強い反応が認められた。以上のことは色素上皮細胞はその基底部とjunctionに陰性荷電を持っており、そのため陰性荷電を持った粒子は色素上皮細胞を越えて網膜側には入りにくいという可能性をを示している。次に同様の技法をもちいてレクチンを反応させたところこの色素上皮細胞の陰性荷電は主にシアル酸によるものと推定された。 細胞骨格蛋白質であるフォドリンおよびアクチニンの局在を同様の技法を用いて電顕観察するとフォドリンは色素上皮細胞の頂突起と基底部に、アクチニンはadherens junctionに認められた。色素上皮細胞の基底部のフォドリンおよびアクチニンは色素上皮細胞による物質の取り込みに関与すると考えられ、選択的な物質の取り込みをとおして色素上皮細胞の眼血管関門の一助となっていると考えられた。
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