研究概要 |
緑内障,殊に低眼圧緑内障の場合に正常人と比べて角膜温度回復状況が低温負荷の條件下で有意に低下していることが証明された。手指末端の低温負荷後の温度回復率も顕著に低下していることと併せて,自律神経殊に交成神経の異常が推定された。 そこで,正常者,低眼圧緑内障,高眼圧緑内障を対象に眼脈流量をバイオラッド社製BFAシステムにより測定したところ,低眼圧緑内障では有意に眼脈流量が低値を示すことを認めた。しかも病期の進行とともにより低値を示す傾向がみられた。 治療として交感神経α遮断剤点眼によって眼脈流量が有意に増加することを証明した。すなわち,塩酸ブナゾシン点眼によって,眼圧の下降も得られるが,眼循環量が点眼1週後より増加し,3ケ月後には最大の増加率(投与前の50%増)が得られた。全酸の血圧や脈拍には有意な変化を認めなかった。さらに,視野変化も改善や不変を示す症例が多く,視野改善例では眼脈流量の増加率が非改善群より有意に高いことを認めた。 低眼圧緑内障の治療法として,眼圧を下降させると同時に眼内血流量の増加を図ることが重要と考えられるが,α遮断薬として塩酸ブナゾシンの点眼によってその効果が実証できたことは新しい治療の可能性を見出したものと考えている。今後さらに長期間にわたって効果の特結性や遠隔成績を検討してゆく予定である。
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