研究概要 |
I.人体病理解剖例から摘出した下記口腔諸組織の加齢変化について、組織学的観察を行った。 (1)歯周組織: 36顎骨(9〜75歳)の非脱灰組織標本を作製し、プラーク・歯石の付着状態,歯肉溝の形状,歯肉上皮の形態変化および細胞分裂像,炎症の量的・質的所見,歯槽骨の変化ながの形態計測を行ない、加齢と歯周炎の発症,進展との関係を検討した。結果: 上皮細胞の分裂指数と加齢との関係は明らかなものはなかった。加齢にともなって、歯肉粘膜にはびらん,潰瘍の発現頻度が高くなっていた。潰瘍形成と炎症の進展とは関連性があると考えられた。 (2)顎関節: 84例(0〜90歳)の非脱灰組織標本を作製し、下顎頭,関節円板,側頭骨関節窩,下顎筋突起,内・外翼突筋,および5例の胸鎖関節について、形態計測を含む光顕的観察を行った。結果: 生下時から硝子軟骨であった下顎頭関節軟骨は、10歳を過ぎる頃から線維性となる。20歳代から関節各部の実質細胞は減少または消失し、組織再生力あるいは適応力は低下すると考えられた。実際に、下顎頭の形態異常は20歳代後からすでに認められ、加齢に伴ってその発症頻度は高くなっていた。 (3)舌: 320例(0〜106歳)の舌中央部前額断組織標本を作製し、脂肪沈着量と年齢との関係について光顕的観察を行なった。結果:脂肪は生後1年頃から出現し始め、経年的に増加する。成人期においては、男性に比して女性において沈着量が多かった。この変化は、舌筋の萎縮に対する脂肪の補空性肥大と推測される。
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