研究概要 |
我々はこれまでに新生ラットの大腿骨を8〜10日間低カルシウム環境下で培養すると経時的に骨頭部が肥大しその肥大化した部位では組織学的には肥大層の増幅肥大細胞数の増加、酵素学的にはアルカリ性フォスファターゼ活性の亢進、他には細胞増殖の亢進、コンドロイチン硫酸合成能の増大、コラーゲン合成能の低下などが発生することを報告してきた。 我々は、このような低カルシウム環境下における現象は細胞内情報伝達系の異常と密接に関係があると推測した。この推測を確かめるために種々の刺激により細胞が応答する過程に重要な役割を果している細胞内カルシウムの働きを調べた。その結果、細胞の環境が低カルシウム状態になると細胞内カルシウムが対照のそれに比べて著しく少ないことが判明した。 次にこの細胞内カルシウムの遊離過程に深く関与しているものと最近特に注目されているInositol,1・4・5-triphosphateも細胞内で減少していることが示唆された。 これらの事実より、やはり細胞の環境が低カルシウム状態になると細胞内情報伝達系に異常の発生することが窺われ、これが骨形成の異常と関係していることが示唆された。 他にも細胞内情報伝達系としてAkinase系、ProteinCkinase系、Gskinase系があり、これらのことは本実験では調べていない。また、細胞膜に情報が伝達されたときに第一に働くGs protein,Gi proteinなどのG proteinsについては全く調べず、今後の課題として残っている。
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