本研究は、組織増殖におけるヒスタミン、ポリアミンの役割追求に重点を置き、増殖速度の早い組織として、舌に癌細胞移植あるいは発癌物質による発癌誘導を行い、人為的に作成した増殖組織におけるこれらアミン類、特にヒスタミンの役割を追求した。 1.先天的肥満細胞欠損マウス(W/W^v)を用い、舌にエ-リッヒ腹水癌細胞を移植、congenic動物である+/+マウスおよび正常動物ddy系マウスと比較することにより、腫瘍増殖初期における肥満細胞およびヒスタミンの影響を検討、肥満細胞の存在が腫瘍組織増殖に促進的に作用すること、W/W^vにおいて、組織増殖とともに非肥満細胞由来ヒスタミンが増加することを認めた。現在、ヒスタミン生成酵素であるHDCの酵素活性阻害剤αFMHを使用、ヒスタミンの役割を更に追求中である。 2.化学発癌分室であるDMBAをハムスタ-舌に塗布時におけるHDCおよびプトレシン生成酵素であるODCの活性変動を検討、DMBA塗布により、両者の活性は共に増加するが、抗蛋白生成作用を有するアクチノマイシンDを同時投与した場合、HDC活性のみが著しい増加を示し、非肥満細胞由来のいわゆるinducible HDCの活性増加によると推定された。 3.DMBA誘発ハムスタ-舌癌におけるヒスタミンおよびポリアミンの変動を検討したところ、正常組織に比べ、腫瘍組織においてプトレシンなど一連のポリアミン量の増加、放射線照射によりそれら増加の抑制を認めたのに対し、ヒスタミンはなんらの変動も示さなかった。 以上の結果より、腫瘍組織で代表される増殖組織において、増殖初期には非肥満細胞由来のヒスタミンが重要な役割を果たすことが示唆された。
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