研究概要 |
過去に我々はヒト唾液のS型シスタチン(シスタチンS,SA,SN)の生合成がシスタチン遺伝子ファミリー(7遺伝子座)により制御されることを見い出した。本研究の目的は、シスタチン遺伝子ファミリーを分子遺伝学的に解析し各メンバー遺伝子の産物、RFLPs、組織発現、染色体上の局在を解明することである。ヒト染色体DNA断片をλファージCharon35に組み込んで遺伝子ライブラリーを作成した。ついでCST1(シスタチンSN遺伝子)より得られた3種DNAプローブを用いてこのライブラリーをスクリーニングし6個のCandidatesを得た。このうち2種クローン(CST2B,CST3と命名)のexon-intron構成、制限酵素地図、塩基配列を解析したところ、CST2BはCST2(シスタチンSA遺伝子)のRFLPに基づく対立形質であり、CST3はシスタチンC(S型シスタチンとは異る組織で発現する。)をコードすることが判明した。シスタチンC(CST3)遺伝子の変異はアイスランド型アミロイドーシス(遺伝病)の原因となるので、シスタチン遺伝子ファミリーを分子遺伝学的に解析することは遺伝子診断の道を開くと考えられる。ノーザンブロット法によりこの遺伝子ファミリーの組織発現を調べたところ、ヒト顎下腺(800塩基および900塩基のmRNA)、気管(1200塩基のmRNA)にメッセージが検出されたが、耳下腺のmRNAは微量であった。このことからシスタチン遺伝子ファミリーは組織特異的に遺伝子発現を行うと考えられた。サザンブロット法によりマウス-ヒトのHybrid Cell Linesより単離した染色体DNAを解析したところ、この遺伝子ファミリーがヒト第20染色体上に局在することが示された。今後さらに未同定のメンバー遺伝子の同定やRFLPsの検索を進めてゆく予定である。
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