ヒト唾液シスタチン遺伝子ファミリ-の分子遺伝学的解析

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63480416
• 研究機関: 日本歯科大学
• 研究代表者: 真田 一男 日本歯科大学, 新潟歯学部, 教授 (70060423)
• 研究分担者: 寺田 あかね 日本歯科大学, 新潟歯学部, 助手 (60180080) ; 下村 浩巳 日本歯科大学, 新潟歯学部, 助教授 (40139259) ; 斎藤 英一 日本歯科大学, 新潟歯学部, 講師 (40120662)
• キーワード: クロ-ニング / システインプロフア-ゼインヒビタ- / シスタチン遺伝子ファミリ- / 遺伝子発現 / ヒト第20染色体 / 唾液 / シスタチンC / シスタチンS

研究概要

ヒトの体液や細胞内外には様ざまなシスティンプロテア-ゼインヒビタ-が存在し、体内のシステインプロテア-ゼの活性を調節したり、生体防御などの役割を演じていると考えられる。これらを総称してシスタチンス-パ-ファミリ-と呼ぶ。我々が研究を進めている唾液型シスタチンはシスタチン遺伝子ファミリ-によって決定される。本年度は、あらたに2種遺伝子をクロ-ニングし、昨年より解析中であったCST2BならびにCST3なども合せて詳細に塩基配列を分析した。新遺伝子をCST4、CST5と命名した。CST3、CST4はそれぞれシスタチンCならびにシスタチンSの前駆体をコ-ドしていることが判明した。これらの遺伝子はいずれも3個のエクソンが2個のイントロンによって分断されており、スプライシングサイトの塩基配列は全てGTーAG規則に従っていた。唾液型シスタチン遺伝子(CST1,CST2,CST4)のプロモ-タ-領域の塩基配列は高度に類似するが、ステチタン遺伝子(CST3)のプロモ-チ-の流列は唾液型シスタチン遺伝子のそれと若干異っていた。この相違が遺伝子発現の組織特異性に関与すると推察される。遺伝子ならびに対応するタンパク質の解析により、全ての唾液型シスタチン(S,SA,SN)は「20残基のシグナルペプチドを含む141残基の前駆体として合成され、121残基のタンパクとして分泌される」ものと結論された。シスタチンCは120残基であると考えられているが、このタンパク質のシグナルペプチドも20残基であり、126残基のタンパクとして分泌される可能性がある。ノ-ザンブロット法による遺伝子発現の検索ならぴにヒトXマスウハイブリッド体細胞系列由来のDNAの解析結果は、「ヒト第20染色体に局在するシスタチン遺伝子ファミリ-に属するメンバ-が組織特異的遺伝子発現を引き起すことによって唾液型シスタチン(シスタチンS,SA,SN)ならびにシスタチンCがつくられる」ことを示唆した。

研究成果

• [文献書誌] Saitoh,E.,Sabatini,L.M.,Eddy,R.L.,Shows,T.B.,Axen,E.A.,Isemura.S.& Sanada,K.: "The human cystatin C gene(CST3)is a member of the cystatin gene family which is localized on chromosome 20." Biochemical and biophysical Research Communications. 162. 1324-1331 (1989)
• [文献書誌] Sabatini,L.M.,Warner,T.F.,Saitoh,E.& Azen,E.A.: "Tissue distribution of RNAs for cystatins,histatins,statherin,and prolineーrich salivary proteins in humans and macaques" The Journal of Dental Resarch. 68. 1138-1145 (1989)
• [文献書誌] 斎藤英一,伊勢村知子,真田一男: "シスタチンCをつくる遺伝子はヒト唾液シスタチン遺伝子ファミリ-のメンバ-である" 歯科基礎医学会雑誌. 31. 93 (1989)
• [文献書誌] 斎藤英一,伊勢村知子,真田一男,Sabatini,L.M.,Azen,E.A.,Eddy,R.L.: "シスタチン遺伝子ファミリ-の分子遺伝学的解析" 生化学. 61. 980 (1989)
• [文献書誌] Saitoh,E.,Isemura,S.& Sanada,K.: "Cloning of the members of the human cystatin gene family" The Journal of Dental Research. 69. (1990)