3年の研究計画を、1)味覚リセプタ-形成に関与する遺伝子の解明、2)味覚リセプタ-の発現、精製と構造解明、の2つの研究課題に大別し、それぞれの結果について以下にまとめる。 1)甘味アミノ酸、Dーフェニルアラニンに対する甘味応答の部分的欠損をもたらす遺伝子型dpa/dpaを有するマウス近交系BALB/cCrSlcにその保有系C57BL/6CrSlcマウスのDpa/Dpa遺伝子型を導入し、dpa遺伝子の周辺遺伝子セグメントはC57BLマウスに等しく、他の遺伝子背景はすべてBALB型になるコンジェニック系(BALB/cCrSlcーDpa/ー)を作製し、dpa遺伝子の機能を調べた。その結果、コンジェニック系はDーフェニルアラニンに対する甘味応答を示すのみではなく、近接した座位に存在するpsr遺伝子の支配するLープロリンに対する甘味高感受性ももたらし、さらに糖、サッカリンに対する応答もC57BLマウスと極めて類似し、高い応答性を示した。このことは甘味の受容サイトは複数個あり、それぞれ異なった遺伝子に支配されるが、それら遺伝子は第四染色体のdpa遺伝子周辺の極めて近接した座位に複合体として存在し、互いに協調して甘味レセプタ-形成に関与していることが考えられる。 2)C57BLマウス200匹の有郭乳頭からmRNAを抽出し、cDNAのライブラリ-を作成した。このcDNAをSP6プロモタ-を挿入した発現ベクタ-でクロ-ニングし、In vitroでmRNAを合成させ、アフリカツメガエル卵母細胞にて翻訳、発現タンパクの味刺激にたいする膜電流応答を調べたが、味刺激に特異的な応答を示すクロ-ンはまだ見いだされていない。また、コンジェニック系の舌抽出物を親近交系BALBに注入し、抗体作製を試みているが今のところ高い抗体価をしめす血清は得られていない。しかし、これらの研究は現在継続中であり、今後も行う。
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