平成元年度研究計画に従い、6種の口腔扁平上皮癌、HSC-2、HSC-3、HSC-4、HSC-5、HSC-6、HSC-7を生後4週齢ヌ-ドマウス頭部皮下に各1×10^6〜10^7コ注入し、腫瘍を形成させ、経時的に、頭蓋骨骨吸収をX線学的および組織学的に観察した結果、各腫瘍間における骨吸収能及び骨吸収様式の差が明らかとなった。1.腫瘍接種後2Wの時点では、各細胞とも直径5-6mm程の腫瘍の形成を認めたが、骨吸収は認められなかった。2.接種後4Wでは、HSC-2、3の増大、特にHSC-3の急速な増大がみられ、softex像でも約10mm大の骨吸収像が確認された。この時点での組織所見はHSC-2の骨組織中への軽度の侵入とHSC-3の脳内への侵入を示し、しかもこれらの骨吸収のほとんどが破骨細胞を介することを示したが、HSC-4に関しては全く骨吸収が認められなかった。以上の結果から、HSC-2、HSC-3、HSC-4は骨局所においてそれぞれ異なる増殖の様式をもつことが明かとなった。HSC-5、HSC-6、HSC-7については現在検討中である。 つぎに骨基質中に大量に含まれるTGF-βに対する各腫瘍の反応性を検索する目的で、細胞数及び、DNA合成能(^3H-Thymidineの取込による)を測定したところ、TGF-βはHSC-4に対してのみ明らかな増殖抑制効果を示し、各腫瘍の骨吸収能とTGF-βに対する感受性に相関性のあることが示唆された。 Massagueらの方法により^<125>IでTGF-βをラベルし、Radio-Receptor assayを行った結果、各HSCにおけるTGF-βの受容体数に関しては明らかな差は認められなかったが、affinity cross linkingを行った結果、in vitroにおいてTGF-βに対し明らかな反応性を示したHSC-4においては従来報告されている三種類のレセプタ-の内Type Iレセプタ-のみの発現が認められた。
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