研究概要 |
これまでに得られた結果によると、TGFーβは単層培養下のHSCー4細胞の増殖を著しく抑制するが、HSCー2,3細胞に対してはほとんど影響を及ぼさないことがわかった。また、以前、我々はaFGFが単層培養下のHSCー2,3細胞の増殖を有意に促進するが、HSCー4細胞に対しては、ほとんど影響を及ぼさないことを報告している。これらの事実と、各HSC細胞の骨吸収様式とを合わせて考えると、TGFーβで増殖抑制効果を受け、aFGFでは増殖に影響を受けないHSCー4細胞はヌ-ドマウス頭蓋骨の吸収を起こさなかったが、TGFーβでは増殖に影響を受けず、aFGFで増殖促進効果を受けるHSCー2,3細胞はヌ-ドマウス頭蓋骨を吸収したということが明らかとなった。 また、受容体についての結果をみると、その数、親和性においては各細胞間で差がみられなかったが、その種類についてはHSCー4細胞ではTypeIが多く、HSCー2,3細胞ではTypeIが少ないことがわかった。このことは、TGFーβの増殖に関する効果が、受容体の種類の違いにより異なることを示唆している。つまり、細胞増殖に関するTGFーβのシグナルはTypeIレセプタ-を介していると考えられた。この点については、OhtaらもTGFーβの造血性幹細胞に対する増殖抑制効果がTypeIレセプタ-を介していると報告しており、我々の結果とも一致している。 以上の点からみて、ヒト扁平上皮癌における骨浸潤能は、その細胞のFGFーβの増殖抑制効果と関連があり、またその効果はTypeIレセプタ-を介している可能性が高いことが示唆された。
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