顎関節に関する生化学的分析、またそれを有効に用いた顎関節疾患の診断法を確立する目的で前年度までに関節円板のコラ-ゲン、および関節液の生化学的分析を行ない幾つかの結果が得られた。ブタ関節円板のコラ-ゲンにおいて、老化に伴う特徴ある還元性架橋結合パタ-ンを示し、また、ヒトにおいては老年者の円板に非還元性架橋であるヒスチジノアラニンが増加していた。病的状態(円板穿孔部周囲)のヒト関節円板には類軟骨細胞が見られ、この部分にもヒスチジノアラニンが認められたことから、これとの関連が示唆された。また、ヒト病的関節液中に疾患の程度との関連が考えられる分子量78Kタンパクを同定し、非コラ-ゲン性であることもわかった。これら結果をふまえて関節円板および関節液中のプロテオグリカン等の基質に注目し研究を進めた。 正常と考えられるブタ関節円板を4M塩酸グアニジンにより可溶性、非可溶性分画に分離し、これらをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、アルシアンブル-およびPAS染色により糖の同定を行った。前者においては、高分子量域にアルシアンブル-染色陽性を示し、コアタンパクと結合したグリコサミノグリカンの存在が示された。さらにコアタンパクを除き、グリコサミノグリカンの電気泳動を行ったところ、コンドロイチン4硫酸、6硫酸、デルマタン硫酸およびケラタン硫酸と同様の泳動パタ-ンを示した。また、後者の糖染色が陽性であったことから不溶性コラ-ゲンに結合すると考えられるグリコサミノグリカンの存在も示唆された。関節液の糖成分に関しても同定はこれからであるが、グリコサミノグリカンの存在は同様の方法で示された。 今後は、抽出分画を高速液体クロマトグラフィ-等により精製し、モノクロ-ナル抗体や酵素を用い更に詳しく同定し、局在特性について検索し、またコアタンパクの性状、他の基質成分についても分析してゆく。
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