研究概要 |
時間変動磁場によって生じる組織内誘導渦電流を調べる目的で血液を対象として誘導渦電流の測定とその分布を観察した。 方法:厚さ0.35mmのケイ素鋼板を重ね合わせ,長さ100mm,厚み50mmのE型鉄芯を2ケ形成し、それぞれに径1.6mmの銅線を150回巻いて電磁石を作製した。電磁石間のgapは12.6mmとした。磁極間は平等磁界であった。予備実験として磁場内に銅線コイルを置き,起電力を測定したところ,起電力は周波数と電磁石コイルを流れる電流に比例したので,この起電力は誘導電力であると考えた。 磁場内に30×30mm,深さ5mmのプラスチック製容器を置き、その中にヒトヘパリン化動脈血(全血),血清,血球沈渣成分(Ht値:80%)を3.6ml入れて周波数1KHz,磁束密度0.035T(テスラ),0.063T,0.09T下で生じる誘導渦電流分布を測定した。測定には断端がOpenな電極を用いてパ-ソナルコンピュ-タおよびXーYテ-ブルを介して1mm/秒の速度で血液および血清中に生じる誘導渦電流を測定した。 結果および考察:誘導渦電流は磁束密度に依存した。その分布は容器周辺が大きく,中心部に向うに従い減少した。この現象は媒質の違いとは無関係であった。媒質別の誘導渦電流は血清がもっとも大きく,ついで全血,血球沈渣成分の順であった。プロ-ブから見た媒質のインピ-ダンスは血清6.85KΩ,全血7.45KΩ,血清沈渣成分16.5KΩであった。以上のことから誘導過電流は磁束密度と媒質のインピ-ダンスに依存することが分った。生体組織の構成成分が一様でなく,インピ-ダンスが異る媒質ではさらに複雑な渦電流分布になると思われる。
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