研究概要 |
臨床的には日常の診療において口腔前癌病変ならびに扁平上皮癌を有する患者の記録を行い,症例を重ねてきた.個々の患者の記録については経時的に1週間ないし1カ月毎に経過観察を実施し,症状の変化に応じて,写真撮影による記録,また必要と認めれば細胞診,生検を施行している.白板症の臨床所見と組織像との比較についてはdysplasiaの有無により発症部位との関連を調査したが,口腔に主として白板症の認められる頬粘膜,歯肉,舌の内では,舌が最もdysplasiaの発現し易い部位であることが本研究によって解明された.また,白板症において上皮下に付随して認められる炎症性細胞浸潤の上皮性細胞異型の出現に及ぼす影響についても検索しているが,現在までのところなお明かな因果関係は認められていない.組織学的異型度と臨床視診型との関連については紅白斑型に異型を示す症例が目立って観察されたが,さらに詳細な分類を組織像のパタ-ン化のもとに行う必要性が本研究より認められ,現在検討中である. 電気泳動法による分析に関しては現在,等電点電気泳動(IEF)を主にファルマシア社の等電点マ-カ-を指標としてケラチンサブユニットの分析を行っている.この分析では,泳動後のポリアクリルアミドゲルを銀染色することにより感度の高い検出が行い得るようになり,染色条件が確立された.また,SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDSーPAGE)によっても,正常口腔粘膜ならびに口腔白板症組織より抽出したケラチン分画の分析を行い,数種のバンドが検出されているが,ケラチンの抽出に用いているClausenの方法でもなおケラチン以外の細胞骨格蛋白の混在が疑われ,現在ウエスタンブロッティングによるケラチンの同定を実施すべく,条件設定に努めている.今後はIEFとSDSーPAGEを組み合わせ,二次元電気泳動を行い,さらに分析精度を向上させたい。
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