歯科治療時の血液粘度および流動特性変化を有病者を対象に研索し。さらに実験動物(雑種成犬)の循環系を用いて血液粘度変化が循環系に及ぼす影響を検討した。全血および血漿の粘度および特性変化は、バイオライザ-^<(R)>(E型粘度計)を用いて測定し、各ズリ速度におけるパラメ-タ-の測定値をパ-ソナルコンピュ-タ-に自動入力、演算、解析およびXーYプロッタ-への自動出力による高速分析を行った。 治療時間が30分以上にわたる歯科治療時には、正常人の血液粘度変化は主としてHt値の変動による影響が認められ、上昇傾向にあったが統計的に有意な変化ではなかった。有病者では、Ht上昇による全血粘度上昇に起因する心疾患患者に著明であり、一方高血圧症、血性虚心疾患および高齢者肺疾患患者、高脂血症、糖尿病患者では、血漿粘度上昇が認められることから、微小循環系への悪影響を示唆する結果が得られた。有病者の血漿粘度の上昇は、血糖値、脂肪酸、蛋白の上昇変化と相関性が認められた。蛋白性分では、α_1ーアンチトリプシン、β_2ーマクログロブリン、フィブリノ-ゲン等の増加と相関性を認めた。動物の循環系を用いて、輸血による高Ht(50〜60%)の条件では、末梢血管抵抗の増加と心拍出量の減少を認め、血液粘度変化は5RPM以下の低ズリ速度において急激に粘度上昇が起こることが判明した。糖質や蛋白の輸注負荷条件下では、見かけ上の全糖年変化は減少傾向にあったが、血漿粘度は著明に上昇したことから、低下した循環Htにある微小循環系への悪影響を示唆していた。 主体の循環系における血液粘度は、血液のように二相性媒質をもつ場合には、臨床上の病態により変化し、特に血漿の粘度変化が微小循環系に強く影響することが判明した。臨床の対策は、適切な輸液により、循環る改善と血液酸素運搬能を維持、改善させ得ることが判明した。
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