成長期の骨格性反対咬合の治療に多用されるchin cap装置は、下顎骨の後方移動および下顎骨の成長抑制効果を目的として利用され、その作用機序については様々な方面から研究がなされている。しかしながら、現在までの研究の多くは二次元レベルでの検索でありchin cap装着後下顎骨に生じる初期変化についての報告もわずかである。それで今回我々は、ウイスタ-系ラット35匹に対して(35日齢、雄)chin cap様装置を装着して片側10gの力で下顎を後方に牽引し、装着後初期の下顎骨の骨改造現象を三次元解析システムを用いて経時的かつ三次元的に検索するとともに、顕微X線装置および時刻描記法とにより下顎骨形態の変化をX線学的かつ組織学的に検討した。 まずX線装置を用いたセファログラムの結果では、装着後初期に下顎切歯の挺出がみられ、その後下顎骨自体に歪みが生じて下顎骨体前方部に上方への力が作用し、下顎骨はcounter clockwiserotationをおこして下顎骨の前下方への成長が抑制されていることが推察された。次に組織学的所見をみると、関節頭では経時的に関節頭全体で軟骨層が薄くなり、下顎枝部分の骨梁も疎で配列が不規則となって、下顎頭および下顎枝における細胞増殖が抑制されていると考えられた。一方顎角部では、時刻描記により下縁部の骨添加がほとんどみられず、咬筋付着部移行部付近において外側方向に活発な骨添加が認められた。最後に三次元解析装置を用いた結果についてみると、関節頭中央部ではやや陥凹がみられ装着期間が長くなるに従って陥凹は深くなっていく傾向にあった。これは組織学的所見により推論したことを裏ずけるもので、関節頭上方部の形態はchin cap装着により変化していることがより明確になった。
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