研究課題/領域番号 |
63480463
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
瀬崎 仁 京都大学, 薬学部, 教授 (50025681)
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研究分担者 |
高倉 喜信 京都大学, 薬学部, 助手 (30171432)
橋田 充 京都大学, 薬学部, 助教授 (20135594)
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キーワード | ペプチド性医薬品 / 大豆トリプシンインヒビター / ウリカーゼ / 化学修飾 / デキストラン / 体内挙動 |
研究概要 |
ペプチド性医薬品のモデルとして、大豆トリプシンインヒビター及び尿酸酸化酵素ウリカーゼを選び、多糖類デキストランを用いた分子構造修飾を施すことによる体内挙動制御の可能性を明らかにした。まずペプチドーデキストラン結合体の合成方法を確立するため、過ヨウ素酸酸化法、臭化シアン法、カルボジイミド法、塩化シアヌル法、エピクロルヒドリン法、SPDP試薬法、活性エステル法の7種類の方法で結合体を合成し、比較検討した。その結果、過ヨウ素酸酸化法が最も収率がよくまたペプチドの活性も高く保持されており、修飾方法として最も適していることが明らかとなった。この方法で合成した大豆トリプシンインヒビターーデキストラン結合体の生体内挙動特性をマウスを用いた動物実験により検討した。未修飾大豆トリプシンインヒビターは、静脈内投与後血中より半減期約2分で速やかに消失し、投与量の大部分が尿中に排泄された。これに対して、デキストラン結合体の血中消失半減期は10倍以上で、尿中排泄も大きく減少することが示され、デキストランを用いた分子構造修飾により、大豆トリプシンインヒビターの血中滞留性が大きく改善されることが明らかとなった。さらに、マウスにおけるトリプシンショック実験あるいはラットにおける急性膵炎モデル実験を行った結果、デキストラン修飾体は未修飾ペプチドに比較し優れた治療効果を示すことが確められた。一方、ウリカーゼに関してもデキストランで修飾することにより体内挙動をコントロールできることが示された。以上の結果より、多糖類デキストランを利用した分子構造修飾のアプローチは、ペプチド性医薬品の生体内挙動を制御するための有用な手段となることが明らかとなった。以上、本研究で得られた知見は、ペプチド性医薬品を実用化するための重要な基礎的情報となり得るものと考えられる。
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