老化メカニズムのなかで中心的役割を果たしていると考えられる異常酵素の産生と蓄積のしくみを明らかにすることを目的として研究を行い、以下のような新知見を得た。 (1)若齢マウス肝臓から部分精製したアミノアシルとRNA合成酵素を用いて試験管内酸化系でモデル実験を行い、活酸素によってこの酵素の一部分が熱不安定化することを明らかにした。この結果、老化過程の蛋白質異常化に対する活性酸素の関与が指摘された。 (2)単離肝実質細胞の初代培養系を用いて、微注入された外来性蛋白質および細胞内標識蛋白質の分解半減期が、老化固体由来の細胞では50〜60%延長していることを明らかにした。この結果から老化動物における異常酵素蓄積の原因は蛋白質代謝回転の低下によることが示唆された。 (3)初老期(23か月齢)マウスを食餌制限下に2か月間飼育し、熱不安定異常酵素の割合および単離肝実質細胞の蛋白質分解速度を調べ、老化組織に蓄積した異常酵素が減少すること、蛋白質半減期が短縮することを明らかにした。この結果、食餌制限の抗老化作用メカニズムの一つは蛋白質代謝の“若返り"にあることが示唆された。 (4)抗ユビキチン抗体を作成し、イムノブロット法で老若マウスの脳、肝臓、腎臓の遊離ユビキチン量、蛋白質-ユビキチン結合体量を測定した。脳では前者が約40%低下し後者が著名に増加していることが明らかになった。このことから脳における蛋白質分解の低下が示唆された。
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