研究概要 |
循環系の恒常性維持に重要な役割を果たしているANP受容体の構造と機能及び遺伝子構造に関する研究を行い,以下の成果を得た。(1)A型ANP受容体(膜の外側にANP結合部位,内側にグアニレ-トサイクレ-ス部位を有する)の膜における存在状態をSDSーポリアクリルアミド-アガロ-ス電気泳動により解析し,一般に信じられているように単量体で存在するのではなく,実際には4量体として存在することを明らかにした。最近,同じサイクレ-スファミリ-に属するアデニレ-トサイクレ-スや可溶性グアニレ-トサイクレ-スの活性発現にも2量体かそれ以上の高次構造が不可欠であることが指摘され,私達の上記の結果が注目されている。(2)ANP受容体遺伝子の構造を解析した結果,以下のことが明らかになった。C型ANP受容体遺伝子は全長85kb以上と極めて長く,8個のエクソンより成る。第1エクソンが1kb以上で,ANP結合部位の大部分をコ-ドしていた。他のエクソンは通常の100bp前後の長さであった。受容体の機能構造とエクソンの関係をみると,ANP結合領域は上述したように第1エクソンに,膜貫通領域は第7エクソン,細胞内領域は第8エクソンに分れて存在していた。さらに最近クロ-ニングされたラットA型ANP受容体遺伝子と比較すると,A型受容体遺伝子の全長は,15kbと短いものの,膜貫通領域と細胞外領域をコ-ドするエクソンの構造が非常によく保存されていた。以上のことから,これら2種類の受容体は,エクソンシャッフリングにより,同一の先祖分子から進化したことが強く示唆された。(3)ヒト副腎由来の腫よう細胞であるSW13がANPに特異的な大変ユニ-クな受容体サブタイプを発現していることを見いだした。
|