ヒト・アルビニズム発症機構の分子遺伝学的解析

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63480471
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 菊地 英明 東北大学, 抗酸菌病研究所, 助教授 (60006111)
• 研究分担者: 山本 博章 東北大学, 理学部, 助手 (40174809) ; 竹内 拓司 東北大学, 理学部, 教授 (60006426) ; 石黒 誠一 東北大学, 医学部, 講師 (20111271)
• キーワード: アルビニズム / チロシナ-ゼ

研究概要

アルビノ患者のチロシナ-ゼ遺伝子上の欠損部位を検索するため、5'上流のプロモ-タ-領域から、種を越えてアミノ酸配列が保存されている、銅イオン結合部位を含む第一エクソンのDNA配列を調べた。
患者末梢血、または細胞株より調製したDNAを、ポリメラ-ゼ・チェイン反応(PCR)法により増幅した。反応に用いたプライマ-は、DNAシ-クエンシングに適当な長さに増幅されるように、三つの領域に分けて各々合成した。増幅されたDNAフラグメントをテンプレ-トとし、片側の5'プライマ-のみを用いて単鎖DNAを通常のPCR法により合成した。精製した単鎖DNAをテンプレ-トとし、^<32>Pで標識した配列決定用プライマ-を用いて、ジデオキシ・タ-ミネ-ション法によりDNA配列を決定した。
アルビノ患者5名のDNAを用いてチロシナ-ゼ遺伝子の塩基配列を調べることにより、そのうち一名のDNA配列に変異があることを見出した。正常者ではグアニン(G)である配列が、患者OCA-8ではアデニン(A)になっており、この変異が同型接合体であることが明らかになった。この塩基置換により、チロシナ-ゼの77番目のアルギニン(Arg)がグルタミン(Gln)に置換される。竹内・山本らにより、アルビノ・マウスの一系統でも、対応するArgに変異を持つことが見出されており、アルビニズム病因のひとつと考えられる。
変異を起こしている部分の配列(CCGG)は、Msplの認識配列であり、OCA-8ではMspl切断部位を失うので、セザン・ハイブリダイゼ-ション法で確認した。アルビノ患者10名のDNAを、Msplで切断して調べると、9kbのバンドを与えるのはOCA-8の患者のみで、他は正常人と同じ2kbと7kbのバンドを示した。これより、他の患者では別の部位の変異と考えられ、現在検索を続けている。

研究成果

• [文献書誌] H.Kikuchi,et al.: "Characteristic sequences in the upstream region of the human tyrosinase gene." Biochim.Biophys.Acta. 1009. 283-286 (1989)
• [文献書誌] H.Kikuchi,et al.: "Detection of point mutation in the tyrosinase gene of a Japanese albino patient by a direct sequencing of amplified DNA." Human Genetics.
• [文献書誌] T.Mito,et al: "Immunocytochemical localization of ornitine aminotransferase in human ocular tissues." Arch.Ophthalmol.107. 1372-1374 (1989)
• [文献書誌] H.Yamamoto,et al.: "Melanin production in cultured albino melanocytes transfected with mouse cDNA." Jap.J.Genetics. 64. 179-185 (1989)
• [文献書誌] T.Takeuchi,et al.: "Genetic control of signal transduction in mouse melanocytes." J.Invest.Dermatl.92. 239s-242s (1989)
• [文献書誌] B.Whitaker,et al: "Expression of virally transduced mouse tyrosinase in tyrosinasenegative chick embryo melanocytes in culture." Pigment Cell Res.2. 524-527 (1989)