研究目的:ヒト染色体異常の発生機構(親起原)を細胞遺伝学的・分子遺伝学的手法により明らかにする。研究成果: (1)過剰染色体の発生機構:(a)18トリソミ-の発生機構:8例の18トリソミ-のうち、5例が母体成熟分裂時の染色体不分離によっていた。(b)過剰X染色体の発生機構:1例のpentaXと3例のXXXXY患者、および3例のX染色体構造異常における過剰X染色体と構造異常の親起原をX染色体短腕の種々のRFLPsをマ-カ-にして追求した。XXXXXおよびXXXXY症例は全て母第1および第2成熟分裂時の連続的な染色体不分離が原因であった。1例の患児の母は血族結婚(いとこ婚)による子供であった。このことは、染色体不分離を惹起する劣性遺伝子の存在を示唆する。(c)一過性骨髄異常増殖症(TAM)おける過剰21番染色体の起原:19名のTAM患者を分析し、全例において過剰21番染色体は1本の21番染色体が重複したものであり、トリソミ-細胞の異形パタ-ンは全例aabを示す結果を得た。結果は21番染色体上にあるTAM関連遺伝子がdisomic homozygosity in trisomic cellsの状態にあることを示唆する。 (2)染色体構造異常の発生機構:3例のPrader-Willi症候群における15番染色体欠失のうち1例、1例のt(9:22)、3例のX染色体構造異常のうち2例は、全て父成熟分裂時に生じた異常であった。他の1例のイソX染色体は母成熟分裂時に生じたものであった。 上記の研究結果は、過剰染色体の発生機構は母成熟分裂時に選択的に生じ、一方de novoの非Robertson型構造異常は全て父成熟分裂で生じるとの仮説を裏付けるものである。
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