研究課題/領域番号 |
63480474
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊賀 立二 東京大学, 医学部・附属病院, 教授 (60012663)
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研究分担者 |
杉本 恒明 東京大学, 医学部・附属病院, 教授 (60019883)
澤田 康文 東京大学, 医学部・附属病院, 助教授 (80114502)
杉山 雄一 東京大学, 薬学部, 助教授 (80090471)
花野 学 東京大学, 薬学部, 教授 (60012598)
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キーワード | 血液脳関門 / 血液脳脊髄液関門 / 肝障害 / 腎障害 |
研究概要 |
薬物の中枢神経系への移行の病態時における変化は、肝障害、および腎障害により血液中の老廃物濃度が上昇し、これらの老廃物が、有機アニオン系の薬物の組織中移行に影響を与えるというスキ-ムにより説明される。我々は、以下の示すin vivoおよびin vitro実験により検討を加えた。モデル化合物としてβーlactam抗生物質[14C]cefodizimeを用いた。in vivo実験([14C]cefodizimeをi.v.投与し、経時的に、血漿、中枢内濃度を測定した)の結果を速度論的に解析したところ、cefodizimeは(1)血液脳関門を透過して脳細胞外液中に分布し、(2)拡散して脳脊髄液中へと移行し、(3)脳脊髄液のbulk flowおよび血液脳脊髄液関門における能動輸送により、血液へとくみ出されるというル-トにより、中枢内に分布することが明らかとなった。更に、非標識benzylpenicillinをinfusionした状態で[14C]cefodizimeを投与するという実験を行った結果、cefodizimeの血液脳関門、および血液脳脊髄液関門透過には輸送担体が関与する可能性が示された。また、対照実験、benzylpenicillinーinfusion実験の両場合、cefodizimeの血液脳関門透過クリアランスは、脳血流速度よりも遥かに小さく、病態による脳血流速度の変化は、cefodizimeの中枢内分布に殆ど影響を与えないことが示された。更に、これらの結果は、in vitro実験により支持された。すなわち、[14C]cefodizimeの血液脳関門透過に対応する実験(単離脳毛細血管内皮細胞を用いた取り込み実験)の結果、薬物取り込みは、有機アニオンにより阻害される促進拡散によることが示された。また、血液脳脊髄液関門透過に対応する実験(単離脈絡叢を用いた取り込み実験)の結果、薬物取り込みは、有機アニオンに特異的な能動輸送によることが示された。これらの結果は、有機アニオン性医薬品の中枢内分布は、病態時に増加した血中有機アニオンにより影響を受ける可能性を示している。
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