本研究はシイタケ調理過程での5′ーヌクレオチド蓄積の最適条件を解明することを目的とするものであり、本年度は、生シイタケおよび干しシイタケ調理過程における核酸・5′ーヌクレオチドの変化、およびこれら成分の分解に関与する酵素類の挙動を検討した。 (1)生シイタケないし水で膨潤した干しシイタケを水と共にほぼ一定の昇温速度で加熱した場合、生シイタケ、干しシイタケ共に、温度が50℃に達するまでは吸水率が次第に増大したが、50℃を越えると一転して吸水率が減少し、一度吸水した水が排出されることが明らかになった。 (2)同じ加熱過程で、ヌクレアーゼおよびホスファターゼは、50〜70℃の温度域で急速に失活した。また、これら酵素の煮汁への溶出は、生シイタケではまったく、干しシイタケではほとんど認められなかった。 (3)同じ加熱条件で、RNAは、50℃前後までは大きい変化を示さず、50〜70℃で急速に減少し、80℃以上ではそれ以上減少しなかった。また、シイタケ、干しシイタケにかかわらず、RNAが煮汁中に溶出することはなかった。 (4)同じ過程で、5′ーヌクレオチドは、50〜70℃で増大し、80℃以上ではそれ以上増加することがなかった。また、5′ーヌクレオチドが増大する温度域で、シイタケから煮汁への5′ーヌクレオチド類の溶出が盛んであり、とくに干しシイタケで、5′ーヌクレオチドの煮汁への溶出が顕著であった。 (5)以上の実験結果から、シイタケ調理過程でのRNA関連物質の変化はつぎのように進行すると考えられる。すなわち、温度が50℃を越えて70℃に達するまでの間に、シイタケ組織中での5′ーヌクレオチドの生成反応と分解反応が急速に進みながら、同時に両分解酵素の熱失活のためにこれらの反応は間もなく収束する。この過程で、煮汁中へ溶出した5′ーヌクレオチドは分解をまぬがれて蓄積される可能性が大きい。
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