研究概要 |
本研究の目的は、シイタケの旨味成分である5'-グアニル酸の調理過程における蓄積機構を解明し、その蓄積量を最大にするための加工・調理条件を確立することにある。研究結果は以下の通りである。 1.核酸の分解に関与するヌクレア-ゼ(以下Nase)及び5′-ヌクレオチド(以下Mt)を分解するホスファタ-ゼ(以下Pase)のシイタケ部位別分布と成長に伴うこれらの変化を検討し、これら酵素の菌傘部での分布は部位によって著しく偏り、菌傘表層部ではPase活性が強く,ひだ部ではNase活性が強いことを明らかにした。 2.(1)シイタケそのまま及びそのホモジネ-トについて、60℃保温中の核酸関連物質の消長を比較し、ホモジネ-トではNtが一旦生成してから速やかに減少するが、シイタケ組織では一旦生成したNtは容易に減少しないことを示した。(2)シイタケ昇温加熱中の核関連物質の消長を調べ50〜70℃で核酸やNtの分解が急速に進こと、NaseとPaseは、いずれも60℃前後で急速に失活すること、シイタケ組織から浸漬液へのNtの溶出は生シイタケより乾シイタケにおいて顕著であること等を明らかにした。 3.上記の実験結果から、シイタケ調理過程でのNt蓄積機構を、《50〜70℃で、Naseは活発に作用して核酸からNtを生成しながら失活していくが、こうして生成するNtのうち、Paseの失活やPaseをあまり含まない部位への拡散・移行によってPaseによる分解作用を受けなかったもののみが蓄積する》と推論した。 4.シイタケの実際的な乾燥条件や調理条件とNt蓄積量との関係を検討し、乾燥条件は調理時のNt蓄積量に大きな影響を及ぼさないこと、調理条件のうら、調理加熱時のシイタケのpHと温度上昇速度は、Nt蓄積量に最も大きい影響を及ぼし、pHは6.5付近、昇温速度は4℃/min.前後でNt蓄積量が最大になること等を明らかにした。
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