1、RNAー蛋白質相互作用 αーサルシン( Sar)は細胞毒素蛋白質で、動物28SrRNAの5末端から4325番目のグアノシンの燐酸ジエステル結合を水解することによって、リボソ-ムを不活性化する。本研究は、rRNAの Sar作用部位のステムル-プ構造を人工合成し、これを基質として用いて Sar の作用機作を調べた。Sarの基質特異性は以下の通りであった。すなわち、1)ステムル-プ構造を必須とするが、ステム長は7塩基対から、3塩基対に短縮可能である、2)ステム部の塩基対の組み合わせに厳密さは要さない、3)ル-プのGAGA構造(○印はSar部位)を必要とする。などである。その他の事実から、Sar作用部位は、翻訳延長反応の延長因子の結合部位であり、GTPの水解に深く関与した機能構造であると推定した。 2、リボソ-ムRNAの機能構造と、リシンの認識反応 リシンは、動物28SrRNAのαーサルシン( Sar)の作用部位に隣接する5末端から4324番目のNーグリコシド結合を水解し、リボソ-ムを不活性化する。本研究は、種々の合成RNA、およびリボソ-ムを基質として用い、リシンの分子機作ならびに、本rRNA構造の蛋白質合成における機能を研究した。その結果、以下の事実が明らかになった。すなわち、1)野生型RNAに対するkm=13.55Mで Vmcx=0.023/min であった、2)必須基質構造としては、ル-プ部にGAGAを有し、ステム長は最小3塩期対であった、3)αーサルシンを処理したリボソ-ムは、リシンの基質となり得た、4)リシン処理をしたリボソ-ムは Sarの基質となり得た、などである。一方、3)、4)と同様な実験を合成RNAについて行ったところ、リシン処理RNAは、Sarの基質となり得るが、Sar処理RNAはリシンの基質とはなり得なかった。以上より、28SrRNA鎖中のリシン/サルシン作用部位のステムル-プ構造は、リボソ-ム粒子中で、極めて複雑な動的機能構造をとっていることが示唆された。
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