ガングリオシドは、微量ではあるが全ての高等動物に存在するシアル酸含有スフインゴ糖脂質である。現在までにセラミド構造の異なる100種以上のガングリシド分子種が報告されているが、その機能は、未だ不明な点が多く残されている。本研究は、ガングリオシド、特に微量のガングリオシド成分についてそれらの新しい生物学的役割を分子・遺伝子レベルで明らかにするための方法論の確立、その実験的応用、ガングリオシドの新しい機能発現機構の解明等を目的として計画された。研究が行われた2年間に、(1)微量ガングリオシドの効果的分画法の開発、(2)ガングリオシドおよびその誘導体に対するモノクロ-ナル抗体の作成技術の開発、(3)これによる超微量ガングリオシドの解析、(4)細胞機能発現の捕捉法の開発などについて成果が得られた。 これらの方法論により、(5)発癌遺伝子(ras oncogene)導入による癌化に伴うガングリオシド発現の異常、(6)ウイルス(インフルエンザウイルスおよび近縁のパラミクソウイルス群、ヒト免疫不全症ウイルス)の受容体機能および感染成立のガングリオシドによる制御、(7)細胞増殖、分化、発生に伴うガングリオシドの発現およびガングリオシドによる制御、(8)ガングリオシドによる生物学的リガンドに対する受容体機能の制御、(9)脳の病的老化や神経細胞の増殖におけるガングリオシドの役割、(10)細胞内情報伝達、タンパク質リン酸化反応などにおけるモジュレ-タ-としてのガングリオシド等、ガンドリオシドの生物学的機能のいくつかの側面が明らかにされ、多彩な機能を有していることが明らかとなった。 これらの成果から、本研究の当初の目的は概ね達成され、今後益々ガングリオシド研究の重要性が増すものと期待される。
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