研究概要 |
真核細胞mRNAキャップ構造の形成には少なくとも4種類の一連の酵素活性が関与する。この内、キャップ構造の基本骨格、GpppN、形成にあずからmRNAキャッピング酵素は、mRNAグアニル酵転移酵素(GTase)とRNA5'ートリホスファタ-ゼ(TPase)の2種類の酵素活性から構成されている。キャッピング酵素の構造と機能を詳細に解明するために、同酵素の機能を酵素化学的ならびに遺伝子レベルで解析し、以下の成果を得た。また、転写開始とキャップ形成との関連についても検討を加えた。(1)動物細胞のキャッピング酵素ではGTaseとTPaseが1本のポリペプチド鎖上にそれぞれドメインを形成して存在するのに対し、酵母の酵素では両活性が2種類の異なるサブユニット、α(52K,GTase)とΒ(80K,TPase)に分かれて存在する。α鎖によるキャップ形成反応は酵素ーGMP共有結合中間体を経て進行し、この場合GMPは酵素のリジン残基に結合していることを明らかにした。(2)酵母染色体遺伝子ライブラリ-より、α鎖遺伝子の全長を単離した。この遺伝子は第7染色体上に存在し、酵母の生育に必須であった。(3)α鎖遺伝子を大腸菌で大量発現させ、高度に精製した組換えα鎖を得た。精製α鎖は、Β鎖非存在下に、酵素ーGMP形成のみならずRNA5'末端にキャップを形成する能力を有していた。(4)組換えα鎖を用いて、GMP結合サイトを含む活性中心近傍15アミノ酸の配列を決定した。(5)HeLa細胞抽出液を用いたRNAポリメラ-ゼIIによるOOinWWーPP OOvitroWWーPP転写系による解析から、転写開始複合体中にはキャッピング酵素系が特異的に組み込まれ、機能していることを明らかにした。(6)当初の予定には組入れてなかったが、ウイルスのもつキャッピング酵素の反応の性質を解析した。(ー)鎖RNAをゲノムとするセンダイウイルスのOOinWWーPP OOvitroWWーPP転写系を確立し、この系を用いてmRNAキャップ形成が細胞核の酵素とは異なる機構(GDP転移型)で行なわれることを明らかにした。
|