研究概要 |
活性酸素は反応性の高い酸素分子種の総称で、近年、癌化や老化との関連が注目されている。ス-パ-オキサイドティスムタ-ゼ(SOD)は生体内で生ずる活性酸素の1種であるO_2^-を消去する酵素である。我々は、生体内に存在する3種のアイソザイムのうち、Cu、Zn-SODが非酵素的な糖の付加反応(glycation)を受け、この結果として活性を低下させることを見出した。グルコ-ス結合部位を検索した結果、この糖化反応はリジンに特異的で、3、9、30、36、122および128番目のε-アミノ基に起こることを明らかにし、3次構造の解析から、活性低下の原因は、active site liganding loopに存在するLys122とLys128にglycationが起こるためであることを示した。次に、グルシト-ルリジンに対する抗体の作成に成功した。これを用いてEnzyme-linked immunosorbent Assay法(ELISA)を開発し、ボロン酸カラムを用いずる糖化SODの定量を可能とした。 Agingとの関連性では、赤血球の加齢における糖化SODを検索し、幼若赤血球に比し老化赤血球で増量していた。さらに遺伝子的早老症の1つでのあるWerner症候群患者赤血球中のglycationを検索した結果、本症候群の患者赤血球中のCu,Zn-SODは、glycationによる不活性化の著しいことが明らかとなった。 糖尿病との関連では、合併症によって患者を分類し、糖化SODの割合との関係を調べた。その結果、合併症として糖尿病性白内障、あるいは重篤な網膜症を有する糖尿病患者では、合併症を持たない糖尿病、及び老人性白内障患者に比べ有意に上昇していた。 このように、糖化SODは、老化や糖尿病合併症との関連が示唆された。特に最近、糖化蛋白質そのものがラジカル発生源となることが指摘されており、SODの活性低下と相乗して、病態に関与していると思われる。
|