研究概要 |
本研究は、主として以下の成果を得ることに成功した。 1.チャ-ジリンIIの3つの断片ペプチドを固相法により合成し、免疫活性を上げるためヘモシアニンに共有結合後、ウサギに免疫し作製した抗体を用いてH^+-ATP合成酵素におけるチャ-ジリンIIのオリエンテ-ションを調べた。その結果、チャ-ジリンIIのN端領域がF_oのC-sideに露出しているが、チャ-ジのクラスタ-部位とC端領域はF_o中に埋もれていることが、はじめて明らかになった。 2.筆者らが、以前発見した異方性阻害剤を用いた解析から、H^+輸送性-電子伝達複合体とATP合成酵素は、各々の複合体のC-側が負、M-側が正の表面電位を発生した“酵素複合体内電場"(いわば、微小平行板コンデンサ-の充電状態)が形成されたエネルギ-化状態が存在することを初めて立証した。 3.抗チャ-ジリンIIC末端抗体と[^<125>I]-protein Aを用いたドット法によるラジオイムノアッセイにより、チャ-ジリンIIは、ミトコンドリアにおいてATP合成酵素のみに、そのF_oのサブユニットの一つとして、本酵素と等モル数存在していることがはじめて明らかとなった。 4.H^+-ATP合成酵素のサブユニットを逆相カラムを用いたHPLCにより高純度に精製後、プロテイン シ-クエンサ-(ABI,470A型)を用い、部分的なアミノ酸配列を決定した。ついで、これらのアミノ酸配列に対応するプロ-ブDNAを作製し、遺伝子操作の手法によりサブユニットのcDNAのクロ-ニングを行った。その結果、F_oのサブユニットの一つであるsubunit bのcDNAは、1,124の塩基対からなり、214個のアミノ酸配列からなる蛋白質をコ-ドしている領域が確認された。また、その上流には、42個のImport Precursor(ミトコンドリアへの輸送シグナル ペプチド)のペプチドをコ-ドしていることが推測された。これは、subunit bのImport Precursorの配列が確認された最初の報告である。
|