研究概要 |
重篤糖尿病状態では内分泌・代謝平衡の崩壊が観察され、内分泌的にはグルカゴン、バゾプレッシン(以下、GVと略)などの血清レベルの高値、代謝的には糖原アミノ酸の血清レベルの高値が知られている。これらの点に就き、動物実験的および臨床的検討で以下の成績が得られた。 1.動物実験的検討:ラット摘出肝灌流実験手段にて、糖原アミノ酸のアラニン、グルタミン(以下、ala,gluと略)存在下に対するG,Vの効果を肝糖新生とケトン産生を指標として追求した。(1)G,V各単独添加は肝糖新生、ケトン体産生を促進、(2)両ホルモンの同時添加でala存在下で相加的に促進されたが、glu存在下では相加的に促進されなかった、(3)両ホルモンの同時添加で肝糖新生は、ala,gluいずれの存在下でも相加的促進はなかった。以上より、環境条件次第ではVはGに対して相加的に働き、糖尿病状態悪化の一因を担う可能性が強く示唆された。 2.臨床的検討:血清Gおよび糖原アミノ酸動態をグルコ-スおよびアラニンの各100g経口負荷(OGTT,OATT)により、糖尿病群の成績を肝硬変および健常者群のそれと比較した。(1)OGTTで糖尿病群のみが血清乳酸値が不変、他2群は経時的に60分迄漸増した、(2)OGTTで糖尿病のみが血清インスリンが漸増しなかった、(3)OATTで血清Gは全群漸増したが肝硬変群で著、(4)OATTで血清尿素窒素が全群で増えたが、血糖の上昇はみられなかった、(5)糖尿病群はOGTTで血清インスリンの増がみられなかったがOATTでは他二群と変わらない漸増があった。以上より、糖尿病患者における内分泌・代謝的動態には特徴が存在し、糖原アミノ酸の果す役割の一つに膵内分泌機能の刺激が考えられた。
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